根管治療が必要なケース

  • 抜歯してインプラントではなく自分の歯でかみ続けたい
  • 痛くなった歯が高い被せ物をした歯なのではずしたくない
  • 神経を抜いたので二度と悪くならないようにしたい
  • 何度も治療を繰り返したくない
  • 歯ブラシは悪くないのに歯茎が腫れるのを治したい
  • 疲れた時に歯が痛くなるのを治したい
  • その時最良の治療を受けたい など

根管治療とは

*

人類は紀元前の昔から、さまざまな感染症と戦ってきました。
原因も治療も十分に確立されていなかった時代には、感染症のパンデミックは歴史を変えるほどの影響を及ぼしてきました。
つまり人類の最大の敵は感染であると言えるのではないでしょうか?
歯、歯周組織という組織は、口腔という体外と体内を貫く組織であり、また咀嚼をする、発音、発語のための道具でもあります。
その上で大事な事は体外からの細菌などの侵入者をバリアーの役割をして、体内に入ってしまうことを防いでいるという事です。

歯のバリアーが破られた最初の状態が虫歯、歯周組織のバリアーが破られた最初の状態が歯周炎と言えるでしょう。主にこの二つが歯自体の存在を危うくします。
虫歯はやがて進行すると、歯髄炎へとなって行きます。歯髄炎、もしくは虫歯が歯の神経にまで達している場合には歯髄と言われる、神経を除去する必要があります。
その過程で虫歯や、歯周病の菌は体内に侵入をしてきていることになります。もちろん、人間には免疫という防御機構があるために、すぐに命に関わるような致命的な感染は起こりませんが、それを放置する事は歯を失う事に直結します。根管治療とはその感染経路の特に虫歯から始まったものに対して、経路の遮断、再感染の防止を行う行為と言えます。
また歯周病から始まったものに対しては歯周病治療が行われます。(詳細は歯周病の項参照
重度の虫歯、歯周病の多くはこの両方の感染が起こっている、もしくは感染が合流してしまう場合はさらに重症化していきます。
そのため、根管治療、歯周病治療の両者が適切になされることが歯の保存には欠かせません。

虫歯であれば、C3、C4の場面でどのような治療を行うか、歯周病であれば、中等度、重度歯周炎に対してどのような処置をするかによって、その歯の寿命が変わることは、現在、周知の事実となっています。

むし歯の進行度

  • C0

    C0
  • C1

    C0
  • C2

    C0
  • C3

    C0
  • C4

    C0
  • CO

    要観察歯
    むし歯になりそうな状態です。フッ素塗布やむし歯予防のセメント、薬を塗って経過観察します。
  • C1

    エナメル質に限局したむし歯
    いわゆる初期むし歯です。少ししみるなどの症状が出始めますが、患者様本人は気付かないことも多い状態です。
    治療は、むし歯予防の成分を含んだセメントで埋めるか、削ってコンポジットレジンと呼ばれる樹脂の詰め物をする。もしくは、金属で詰め物をします。
    色が白くて、機能的な状態に治したいとご希望の方は、保険外治療にて治療することもできます。
  • C2

    象牙質にまで及んだむし歯
    治療の方法は基本的には、C1と同様です。しかし、C1よりも進んでいるので削る刺激などが神経にまで及びやすく治療後に痛みが出たり、むし歯除去中に神経に達し、結果神経を取ることになることもあります。
  • C3

    歯髄にまで及んだむし歯
  • C4

    残根と言われる状態
    歯髄にむし歯の炎症が及んだ場合には根管治療が必要になります。
    この状態になってしまった場合、根管治療の質や方法、選択する材料によって歯の寿命は大きく変わってくると言えます。
    歯科医師によって状況によっては、C4の時点で即抜歯と判断することもあります。
    このC3、C4の状態が判断の分かれるボーダーラインになります。
    特にC3、C4の再治療はさらに保存することが難しくなります。
歯周疾患の重症度別 歯根端切除の予後
  • Class A
    予後
    良好
    Class A
    • 臨床症状

    • エックス線透過像

    • ポケット

    • 動揺

  • Class B
    予後
    良好
    Class B
    • 臨床症状

    • エックス線透過像

    • ポケット

    • 動揺

  • Class C
    予後
    良好
    Class C
    • エックス線透過像

    • ポケット

    • 動揺

  • Class D
    予後
    不良
    Class D
    • エックス線透過像

    • 病的ポケット

  • Class E
    予後
    不良
    Class E
    • 根尖病変と交通する
      歯周ポケットの存在

    • 破折

  • Class F
    予後
    不良
    Class F
    • 根尖病変とつながる頬側
      骨の完全喪失

    • 動揺

修復治療の質は根管治療の予後に影響を及ぼします
Ray & Trope(1995)
根管治療 修復治療 成功
Good Good 91.4%
Poor Good 67.6%
Good Poor 44.1%
Poor Poor 18.1%
Tronstad L., et al.(2000)
根管治療 修復治療 成功
Good Good 81%
Poor Good 56%
Good Poor 71%
Poor Poor 57%

Ray & Trope(左)はエックス線写真像から根管充填の質がよいもの、修復物のマージン部に問題がないものをGoodとして、どちらが根管治療歯の成功率に影響を与えるかを調べた。この調査からは、根管治療の質より修復物の質のよいほうが成功率は高いということになる。一方、Tronstadら(右)の同様の調査では、修復物の質より根管治療の質がよいほうが成功率は高かった。この調査から、根管治療を成功に導くには根管治療の質がよいことは言うまでもなく、修復治療の質も重要であることが示唆される。

根管治療のメリット

*

海外においての根管治療の評価は非常に高くインプラント治療とほぼ同等な評価をされています。
一度、神経を取ってしまうと痛みを感じないためにその後、その歯が虫歯に犯されてしまった場合にも気づかず対応が遅れてしまうと抜歯にいたってしまうのです。

つまりは、不適切な根管治療は抜歯に直結することになりますし、逆に適切な根管治療は健康な状態で歯の保存が可能になります。

難しい根管治療に対しても専門的治療にて歯の保存を目指します。
最大のメリットは自身の歯を保存することによって、歯に組み込まれている精密なセンサーを保存できることです。

みなさん、食事をするときに、この食べ物の硬さはこのくらいだから、力をどのくらいにして、咀嚼回数は何回でどのタイミングで飲み込もうや、どういう方向から顎を動かしてとかを考えた事がありますか?
これらはすべて、口腔周囲の筋肉や歯、神経に組み込まれている精密なセンサーの情報を一旦、脳に送って、そのフィードバックとして、なにも考えずして無意識に行えているのです。入れ歯やインプラントにはこの機構はないのです。

費用に関しても十分な機能回復を行うとした場合にインプラント治療を選択する場合がありますが、根管治療で歯自体の保存が可能であれば、コストカットし、しかも自身の歯を残せるというメリットがあります。
そう考えると保険外の根管治療の費用は高くないと言えます。

保険診療と保険外診療(自由診療)の違い

我が国では、戦後、国民の生活を豊かにし、世界に追いつこうという考えのもと、生活に支障のでるような、病気に対して国民皆保険という制度作り、医療費のほとんどを国で負担し、国民の医療費負担を減らそうと考えました。
そのため、我が国で一番重要と考えられた内容はなにかというと、誰もが平等に一定水準の治療を受けられることにあります。患者様には以外と知られていないのですが、これだけのしっかりした医療制度がある国は世界では、とても稀だと言われています。反対にアメリカのような国では、国民皆保険がないことや、医療の質にこだわるあまり、治療費が高騰し、医療格差が大きいと言われています。そのため、医療費のせいで借金をしてしまうことや、治療を受けることができない人が出てきてしまうことが大きな社会問題となっています。

つまり国民皆保険が発展している、我が国は世界で見てもとても恵まれた医療制度を持った国と言えます。しかし、その反面、国の経済を圧迫し、新たな治療法や材料を保険診療内に取り込むことが難しくなってきているとも言われます。

国民医療費と歯科医療費の推移

そのため、医科では、特殊な薬、最先端の放射線治療、移植治療、重粒子治療などの保険外もしくは、国内では認められていない治療が見られるようになってきました。特に歯科は、最新の治療方法や材料は保険外治療という扱いをされていることが多いようです。
そのため、現在の考え方や患者様の希望などを反映すると保険外治療を提案させていただかざるを得ないことがあります。

実際、医療費が増大していると言われているのですが、歯科はこの20年間ほとんど変化がありません。
この結果は、新しい治療が保険外として扱われていることや、受診する患者様の数に変化がないことを示唆しているかもしれません。(右図参照)

根管治療における、保険診療と保険外診療(自由診療)の比較

横にスワイプしてご覧ください。

従来からの歯内療法
30年前から変わらない方法に限られる
世界基準の根管治療
徹底的な感染除去を行う
現在考えられる、最善の方法で行う
視覚

裸眼
(根管内は見えないため手の感覚のみで行う)

ルーペや顕微鏡(マイクロスコープ)を使用
(根管の中を照明がある状態で拡大して視て行う)

消毒

仮の消毒剤が
術に欧米で禁止されている薬剤もしくは
使わないで行っていることがある

感染管理が十分に行われていないこともある

水酸化カルシウムや抗生剤などの
体に害のない薬剤

感染管理が行われている
ラバーダムや滅菌

削る道具

見えない感染部分の取り取しが多い
ステンレス製、頻回使用

感染の取り残しが少ない
元々の形を壊さない
最新の器具

治療中の蓋

細菌の感染を抑えられない

治療期間中の感染を防ぐことができる蓋

最後に詰める薬剤、蓋

30年前から変わらない方法

現在考えられる理想的な材料、方法で行う。

EX) MTA、バイオセラミックス

成功率 初めての治療 50%60% 80%90%
再治療 40%50% 70%80%

根管治療の流れ

根管治療の流れは「包括歯科診療とは」をご覧ください。

根管治療の成功のキーポイント

保険外診療(自由診療)が可能にする世界基準の根管治療