人類は紀元前の昔から、さまざまな感染症と戦ってきました。
原因も治療も十分に確立されていなかった時代には、感染症のパンデミックは歴史を変えるほどの影響を及ぼしてきました。
つまり人類の最大の敵は感染であると言えるのではないでしょうか?
歯、歯周組織という組織は、口腔という体外と体内を貫く組織であり、また咀嚼をする、発音、発語のための道具でもあります。
その上で大事な事は体外からの細菌などの侵入者をバリアーの役割をして、体内に入ってしまうことを防いでいるという事です。
歯のバリアーが破られた最初の状態が虫歯、歯周組織のバリアーが破られた最初の状態が歯周炎と言えるでしょう。主にこの二つが歯自体の存在を危うくします。
虫歯はやがて進行すると、歯髄炎へとなって行きます。歯髄炎、もしくは虫歯が歯の神経にまで達している場合には歯髄と言われる、神経を除去する必要があります。
その過程で虫歯や、歯周病の菌は体内に侵入をしてきていることになります。もちろん、人間には免疫という防御機構があるために、すぐに命に関わるような致命的な感染は起こりませんが、それを放置する事は歯を失う事に直結します。根管治療とはその感染経路の特に虫歯から始まったものに対して、経路の遮断、再感染の防止を行う行為と言えます。
また歯周病から始まったものに対しては歯周病治療が行われます。(詳細は歯周病の項参照)
重度の虫歯、歯周病の多くはこの両方の感染が起こっている、もしくは感染が合流してしまう場合はさらに重症化していきます。
そのため、根管治療、歯周病治療の両者が適切になされることが歯の保存には欠かせません。
虫歯であれば、C3、C4の場面でどのような治療を行うか、歯周病であれば、中等度、重度歯周炎に対してどのような処置をするかによって、その歯の寿命が変わることは、現在、周知の事実となっています。
C0
C1
C2
C3
C4
CO
C1
C2
C3
C4
臨床症状
有
エックス線透過像
無
ポケット
無
動揺
無
臨床症状
有
エックス線透過像
小
ポケット
無
動揺
無
エックス線透過像
大
ポケット
無
動揺
無
エックス線透過像
大
病的ポケット
無
根尖病変と交通する
歯周ポケットの存在
破折
無
根尖病変とつながる頬側
骨の完全喪失
動揺
無
Ray & Trope(1995) | ||
---|---|---|
根管治療 | 修復治療 | 成功 |
Good | Good | 91.4% |
Poor | Good | 67.6% |
Good | Poor | 44.1% |
Poor | Poor | 18.1% |
Tronstad L., et al.(2000) | ||
---|---|---|
根管治療 | 修復治療 | 成功 |
Good | Good | 81% |
Poor | Good | 56% |
Good | Poor | 71% |
Poor | Poor | 57% |
Ray & Trope(左)はエックス線写真像から根管充填の質がよいもの、修復物のマージン部に問題がないものをGoodとして、どちらが根管治療歯の成功率に影響を与えるかを調べた。この調査からは、根管治療の質より修復物の質のよいほうが成功率は高いということになる。一方、Tronstadら(右)の同様の調査では、修復物の質より根管治療の質がよいほうが成功率は高かった。この調査から、根管治療を成功に導くには根管治療の質がよいことは言うまでもなく、修復治療の質も重要であることが示唆される。
海外においての根管治療の評価は非常に高くインプラント治療とほぼ同等な評価をされています。
一度、神経を取ってしまうと痛みを感じないためにその後、その歯が虫歯に犯されてしまった場合にも気づかず対応が遅れてしまうと抜歯にいたってしまうのです。
つまりは、不適切な根管治療は抜歯に直結することになりますし、逆に適切な根管治療は健康な状態で歯の保存が可能になります。
難しい根管治療に対しても専門的治療にて歯の保存を目指します。
最大のメリットは自身の歯を保存することによって、歯に組み込まれている精密なセンサーを保存できることです。
みなさん、食事をするときに、この食べ物の硬さはこのくらいだから、力をどのくらいにして、咀嚼回数は何回でどのタイミングで飲み込もうや、どういう方向から顎を動かしてとかを考えた事がありますか?
これらはすべて、口腔周囲の筋肉や歯、神経に組み込まれている精密なセンサーの情報を一旦、脳に送って、そのフィードバックとして、なにも考えずして無意識に行えているのです。入れ歯やインプラントにはこの機構はないのです。
費用に関しても十分な機能回復を行うとした場合にインプラント治療を選択する場合がありますが、根管治療で歯自体の保存が可能であれば、コストカットし、しかも自身の歯を残せるというメリットがあります。
そう考えると保険外の根管治療の費用は高くないと言えます。
我が国では、戦後、国民の生活を豊かにし、世界に追いつこうという考えのもと、生活に支障のでるような、病気に対して国民皆保険という制度作り、医療費のほとんどを国で負担し、国民の医療費負担を減らそうと考えました。
そのため、我が国で一番重要と考えられた内容はなにかというと、誰もが平等に一定水準の治療を受けられることにあります。患者様には以外と知られていないのですが、これだけのしっかりした医療制度がある国は世界では、とても稀だと言われています。反対にアメリカのような国では、国民皆保険がないことや、医療の質にこだわるあまり、治療費が高騰し、医療格差が大きいと言われています。そのため、医療費のせいで借金をしてしまうことや、治療を受けることができない人が出てきてしまうことが大きな社会問題となっています。
つまり国民皆保険が発展している、我が国は世界で見てもとても恵まれた医療制度を持った国と言えます。しかし、その反面、国の経済を圧迫し、新たな治療法や材料を保険診療内に取り込むことが難しくなってきているとも言われます。
そのため、医科では、特殊な薬、最先端の放射線治療、移植治療、重粒子治療などの保険外もしくは、国内では認められていない治療が見られるようになってきました。特に歯科は、最新の治療方法や材料は保険外治療という扱いをされていることが多いようです。
そのため、現在の考え方や患者様の希望などを反映すると保険外治療を提案させていただかざるを得ないことがあります。
実際、医療費が増大していると言われているのですが、歯科はこの20年間ほとんど変化がありません。
この結果は、新しい治療が保険外として扱われていることや、受診する患者様の数に変化がないことを示唆しているかもしれません。(右図参照)
横にスワイプしてご覧ください。
|
|
||
視覚 |
裸眼 |
ルーペや顕微鏡(マイクロスコープ)を使用 |
|
消毒 |
仮の消毒剤が 感染管理が十分に行われていないこともある |
水酸化カルシウムや抗生剤などの 感染管理が行われている |
|
削る道具 |
見えない感染部分の取り取しが多い |
感染の取り残しが少ない |
|
治療中の蓋 |
細菌の感染を抑えられない |
治療期間中の感染を防ぐことができる蓋 |
|
最後に詰める薬剤、蓋 |
30年前から変わらない方法 |
現在考えられる理想的な材料、方法で行う。 |
|
成功率 | 初めての治療 | 50%~60% | 80%~90% |
再治療 | 40%~50% | 70%~80% |
Endodontics
Restration &
Prosthodontics
Periodontics
Endodontics
Periodontics
Blog